失語症とは ?
 失語症とは、大脳の言語中枢が損傷された結果、それまでに獲得していたことばの能力が 障害された状態ですので、話すことだけではなく、聴くこと、読むこと、書くことなどがす べて多かれ少なかれ障害されます。  
 
    どのような症状になるのですか?
1)  まず、話しことばの障害について説明します。 言いたいことが頭にうかんでいるのに、 ことばが咄嗟に出てこないことを喚語困難といいます。これは程度の差はあるものの、 患者さん全員に認められます。  また言おうとしたことばが他のことばに置き換わってしまう症状もよく見られます。 これには「新聞」と言いたい時に「ノ−ト」というように、別のことばに置き換わって しまう語性錯語と、「しんびん」と一部の音が変わってしまう字性錯語があります。 さらにほとんどの音が変わってしまって、日本語にないことば(新造語)になることや、 錯語や新造語が連続してわけのわからないことばになってしまうこと(ジャ−ゴン)も あります。
2)  つぎに理解の障害についてですが 音はよく聞こえているのに、それがどういう意味なの かわからなくなることがあります。 私達が外国語を聞いている時の状態と似ているかもしれません。早口や、長く複雑な話は さらに理解しにくくなります。  また文字を見てもその意味が理解できないこともあります。漢字の方が仮名よりもわかり やすいことが多いです。
3)  書くことについては、漢字と仮名とで差のある場合があります。 また仮名一文字は書けても、単語や文になると難しくなります。
4)  その他様々な症状が、失語症に伴って出現することもあります。  その一つに、失行という症状があります。これは麻痺や認知面などの問題はないのに、手や 足や顔面の動作が意図的にできなくなり、日常よく使う道具などの使用が難しくなる状態で す。また前に言ったことばや動作が、次のことばや動作の時に再び出てしまうことがあり、 保続といいます。失語症は、記憶や思考力、判断力などが損なわれる痴呆とは基本的には違 います。しかし、大脳の損傷のために、多少の知能低下を伴うこともあるかも知れません。 
 
    失語症は誰でも同じ症状ですか? 
 失語症の症状は、患者さん一人一人すべて異なります。代表的な失語症のタイプと症状を簡単 に説明します。
1)  ブロ−カ失語:抑揚やリズムの障害されたたどたどしい話し方になり、日本語らしさが失わ れます。発話量は少なく文も短くなります。理解は比較的良好です。仮名の読み書きが難し くなります。
2)  ウエルニッケ失語:理解の障害が重度です。流暢にペラペラと話しますが錯語が多くて内容 が乏しく、自分のことばがまちがっていることに気付かないこともあります。重症の場合は ジャ−ゴンになります。
3)  健忘失語:喚語困難が目立ちます。錯語は少なく、理解も良好です。
4) 全失語:言語機能が重度に障害されます。意味のあることばは全く言えないか、あるいはご く限られた語や音しか言えなくなり、簡単な内容の理解も難しくなります。意志疎通が非常 に困難です。
 
    失語症のリハビリテ−ションについて。
1)  失語症の検査とはどんなものですか?
  代表的な標準失語症検査(SLTA)は、聴く・話す・読む・書く・計算の5項目から成り ます。これにより日常の会話ではよく分からない症状や改善の度合いを知ることができます。 この他、合併しやすい行為・認知の障害や知能についても検査により評価します。
2)  訓練はどのようにして行なうのでしょうか?
 訓練は発症後状態が安定したらなるべく早期 に開始します。通常、一定期間集中訓練を行い、訓練目的が達成された時点で終了となりま す。 訓練は一回30分の個人訓練と必要に応じてグル−プ訓練も行っています。 訓練内容は症状や重症度、発症からの期間、必要性などを考慮した上で決められます。 コミニュケ−ションに重きをおいた訓練では、話すだけでなく字や絵や図を書いたり、ジェ スチャ−や指差し、コミニュケ−ション・ノ−トの活用など伝達しやすい手段を用いるよう に促します。  グル−プ訓練には、会話のほか、ゲ−ムや歌のグル−プがあります。グル−プ訓練はコミニ ュケ−ション訓練の場としてだけでなく、同じ立場の人と知り合うことで孤立感から解放さ れ、互いに励ましあい、意欲を高めることにも役立ちます。